教員業績データベース |
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言語種別 | 日本語 |
演題 | 治療耐性がん細胞における過酸化水素耐性メカニズムの解析 |
学会名 | 第70回日本薬理学会西南部会 |
主催者 | 日本薬理学会 |
学会区分 | 地方会等 |
発表形態 | 口頭 |
発表形式 | 一般 |
発表形式名 | 一般 |
発表者・共同発表者 | 富田和男, 桑原義和, 髙裕子, 塚原飛央, 古川みなみ, 並河英紀, 田中康一, 漆原佑介, 北中純一, 北中順惠, 栗政明弘, 西谷佳浩, 宮脇正一, 西山信好, 竹村基彦, 福本学, 佐藤友昭 |
発表年月日 | 2017/11/18 |
開催地 (都市, 国名) |
鹿児島 |
概要 | <目的> 放射線治療は、外科的手術、化学療法などとともにがん治療の柱のひとつであるが、放射線耐性細胞の存在はその治療の障害として大きな問題となっている。そのため、放射線耐性獲得のメカニズムを明らかにできれば、治療効果が高まり、がん克服の足がかりとなると考えられる。そこで放射線治療に用いられる2Gy/dayの照射を繰り返しても増殖する「臨床的治療耐性がん細胞 (CRR細胞)」を樹立した。CRR細胞は、放射線以外にも抗がん剤であるDocetaxelに耐性を示すこと、ゲノム構造が異常となっていること、ミトコンドリアの膜電位が低下していることなどが分かっているが、その耐性獲得のメカニズムについての詳細は不明である。本研究ではCRR細胞の過酸化水素に対する耐性とそのメカニズムについて検討した。
<方法> HeLaおよびSASのCRR細胞に対し、0〜100 µMの濃度で過酸化水素処理を行い、その生存率をWSTアッセイにより調べた。その後、過酸化水素を分解する内在性のカタラーゼ遺伝子の発現量と酵素活性、ミトコンドリアDNAコピー数とATP量、ATPase遺伝子の発現量について検討した。さらに細胞膜電位をDiBAC4(3)、内在性の過酸化水素量をHYDROP、脂質の過酸化をHNEの免疫染色にて解析を行った。 <結果と考察> WSTアッセイの結果、CRR細胞は過酸化水素にも耐性を示す事が明らかとなった。また、カタラーゼ遺伝子発現はCRR細胞で上昇していたが、酵素活性は親株と比べて有意な上昇は見られなかった。ミトコンドリアDNAのコピー数とATP量はCRR細胞において減少していた。膜に存在し、ATP依存的に細胞内外のイオン濃度勾配形成に預かるATPaseの発現量は親株とCRR細胞で変化が認められ、細胞膜電位はCRR細胞で低下していた。さらに、過酸化水素処理後の細胞内過酸化水素量とHNE量は、親株で変化が見られる処理後2時間であっても、CRR細胞において有意な変化は見られなかった。 以上より、CRR細胞では、内在性カタラーゼによる酸化ストレスの低減効果よりも、ミトコンドリア機能低下に伴うATP産生の減少が細胞膜の活動低下を惹起し、細胞内への過酸化水素の取り込み量を減少させるため、細胞膜における脂質の過酸化とそれに引き続いて起こる細胞死を抑制している可能性が示唆された。 |